見えない無機質なところもきれいに
今迄、約30件程の厨房をみて来ましたがきましたが、その印象はどこも「汚い」
唯一綺麗でしかも清潔感が感じられたところは、僕より5歳ほど若いけど上司でもあった長野県松本市の明神館の田邊シェフの厨房だけ。
他は、本当に一秒でもそこに居たくないと思う所や、生の鶏肉や豚肉を触った手をすぐに洗いもせずにダスターや手拭きなどでパパっと拭いてその手であちらこちらの冷蔵庫やら調理道具を触りまくる事は、極一般的で、悲しいかな料理人の現状。
現在は、ゴム手袋着用のところが増えてきていますが、そのゴム手袋を逐一替えている人は極稀で、概ね洗い物する時もそのままの事が多い。
因みにスイス、ローザンヌのすしを作る大きな工房でも手袋必須でしたが、大して変わらず、マメに手袋を替えている人はおらず、同じような状況でした。(スイスは日本より衛生指導が厳しいのですが)
結局僕のなかで行き着いた結論としては、コスト的にもマイクロプラスティックが世界的に懸念されている観点からも、そして衛生面としても、今現時点では、時には界面活性剤の使用もしなくてはならないのですが、素手の調理で「とにかく逐一手を洗う」これに尽きます。
中々、 今迄の 慣習を見直したり、改善したりする事を嫌う傾向が強いけれども、僕らにはそうした俯瞰した見方が必要だと信じています。
その上で、お客様にもスタッフにも普段目につかない様な場所も日ごろから綺麗に掃除をする事がとても大切です。
概ねお客様の質が良い店は、トイレをとてもキレイにされています。
僕も見習って、便器に頬ずり出来るくらい毎日キレイにしていました。
その細かな所をキレイにして、命を吹き込むようにすると、居心地が良くなります。(お客様は、なんとなく居心地が良いとしか感じませんが、このあてつけがましく無い営業がウケます)
キレイに掃除、整頓する事こそが、料理の原点だと信じて止みません。
プロとはそういう事にも気を配る事が大事だと。
不思議ですが、いつも以上に掃除したときはお客様が多くいらして、いつも以上に喜んでいただけました。
ここで大切なのが、
「きれいな店から美味しいものが出るとは限らない、けれども汚い店から美味しいものは出ない」。要は店を清潔に保つのは当り前、最低限やるべきという事。
「一より習ひ十を知り、十よりかえる、もとのその一」(利休道歌)
原点回帰、初心貫徹そして、環境、自然、人間にもより良い食環境のイノベーションを巻き起こし、成功の足掛かりに。